さて、リラ冷えについてです。
 
季語で「花」と言えば桜のこと。
いろんな花があるじゃん!と思う人も多いけれど、
俳句の世界でただ「花」と詠めば、桜=春の季語になる。
これは、どんな季節でも月は天に昇るのに、
ただ「月」と詠めば秋の季語になるのと同じですよね。
 
「花冷え」は、桜の季節に寒さが戻ることをさしますが、
春が遅い北海道ではリラ(ライラック)の花が咲く五月の終わり頃に
やってくる寒さを「リラ冷え」と呼ぶのだそうです。
辰也さんの句、
「襟立ててイタリーに聞く花便り」
で、ふとその「リラ冷え」という言葉を思い出しました。
イタリアの早春に咲く花が、どんな花なのかは知らないけれど、
場所が違い、咲く花が違っても
春を告げる花を眺めながら寒さを感じる時がある。
 
そう思って、この句を選ばせてもらいました。